在留資格を申請する際には、様々なポイントや注意点があります。在留資格の許可不許可の判断は、法務大臣の広範な裁量に委ねられているため、個々の事情に応じて適切な申請を行うことが重要なのですが、今回は、実務上において特に重要な4つのポイントを解説します。
「在留資格申請中に海外に渡航して良いか?」という疑問を持たれている方が多くいらっしゃいます。
確かに、在留資格を申請している間に滞在している国を変更するというのは、その渡航先や渡航の目的等によっては、許可・不許可に影響を与える可能性はゼロではありません。ただし、必要性のある海外渡航、仕事や観光など通常目的での海外渡航であれば、在留資格の申請中に滞在国を変更したとしても、そのことを理由として、不許可になることはないでしょう。ただし、注意点はあります。
海外に滞在しながら日本の在留資格を申請する場合と、日本に滞在しながら日本の在留資格を申請する場合に分けて説明をします。
例えば、アメリカ国籍の方がアメリカに滞在しながら、(日本の協力者を介して)日本の在留資格を申請した後、アメリカ以外の国に渡航されることがあります。
このように、日本の在留資格の申請中に国外に渡航されることは可能なのですが、申請をする際の申請書に「査証申請予定地」を記載する必要があります。
査証申請予定地とは、在留資格が許可された後に、どちらの国の在外公館(日本大使館・領事館等)で査証申請の手続きをするかということです。
あくまで「予定地」なので、在留資格申請時の滞在国と実際の手続きを行う国に相違があっても、問題はありませんが、海外に渡航する予定がある場合には、査証申請予定地に当該渡航先を記載してください。
日本に滞在しながら日本の在留資格を申請する場合とは、在留資格を変更または更新するような場合です。
そのため、更新または変更申請の場合は、日本に滞在をしながら在留資格の結果を待つことになります。
この場合、申請の際にパスポートを提示する必要はありますが、提出する必要はないため、海外へ渡航することは可能です。
しかし、在留資格の結果が出た際には、ご自身の在留期限の2ヶ月を経過するまでに、日本国内にて手続きをする必要がありますから、注意してください。
在留資格を申請する際に、日本語以外で記載されている書類に関しては、原則的に日本語への翻訳が必要です。
この点、翻訳者に制限はございませんので、ご自身にて翻訳をされることも可能です。
しかし、翻訳に関しては、当然ですが正確性を求められており、翻訳者の署名が必要です。
また、翻訳ミスによりご自身の申請に不利に働く可能性もございますので、不安な場合には、行政書士等の専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
在留資格の申請書には、犯罪歴を記載する箇所があります。日本国内・国外を問わず、犯罪歴がある方は、隠さずに必ず記載するようにしましょう。過去何年前までという限定もありませんから、過去に行った犯罪はすべて記載の対象となります。
犯罪歴があると不許可の可能性がが高まりますから、ついつい「隠した方がよいのでは!?」と思われるかもしれません。しかし、入管(出入国在留管理局)側は、申請書からのみでなく、犯罪歴をくまなく調査するため、犯罪歴を隠そうとしても、見つかってしまう可能性があります。
犯罪歴の隠ぺいが発覚した場合は、申請が許可される可能性はかなり低くなってしまいます。それよりは、犯罪歴がある場合には、犯罪歴を申請書に記載し、別途「説明書」等で犯罪の詳細や今後は行わないこと、反省していることなどを明確に説明しておいた方が、許可となる可能性が高まるでしょう。
在留資格の申請には、取得しようとする在留資格の種類に応じて、必ず提出しなければならない書類が決められています。(法務省のホームページ等に明記されています)。
決められた書類は原則として、全てを提出しなくてはなりませんが、状況により、準備できないこともあるでしょう。そのような場合には、「理由書」等を作成し、なぜ提出ができないのかを明確にしておきましょう。犯罪歴の場合の「説明書」は必須ではあいませんが、必要書類を提出できないときの「理由書」の作成は必須です。なお、説明書・理由書の表題名に決まりはありません。
こちらの記事では、在留資格に関する実務に関して、よくある質問について解説しました。
在留資格は、法務大臣の広範な裁量に委ねられており(実際には審査官)、当然ですが、人が許可不許可を判断しています。
日本の在留資格の根本的なシステムとして、日本国に損害を与えるような人は原則的に受け入れないこととしています。
逆に言うと、日本国に損害を与える可能性が低く、かつ、日本に利益を与えられるような説明ができれば、許可の可能性は高まるでしょう。つまり、在留資格の申請の際には、入社試験と同じように、自分の強みを明確に入管に説明することが重要となります。