人材不足といわれる昨今、日本の大学や専門学校に留学している外国人の方を新卒採用することは、雇用する企業にとっては、大きなメリットを感じられるかと思われます。
日本に留学をしている留学生は、すでに日本で数年間生活をしており、日本の文化に適応し、生活基盤がすでに形成されていることが多いため、雇用する企業にとっても、安心材料となります。
また、日本の学校を卒業できる日本語能力はもちろん、各学部の専門知識を有しているため、即戦力として期待することができます。
しかし、留学生を新卒採用する際には、様々なポイントがありますので注意してください。
在留カードとは、その外国人の方の在留資格の種類、在留期限等を確認できる顔写真付きの証明証となります(運転免許証をイメージしていただけたらわかりやすいと思います)。つまり、在留カードを見れば、その外国人の方が適法に日本に滞在しているかどうかを確認することができます。
留学生を雇用される際には、現在の在留資格が「留学」となっているか、在留期限は残されているかを、まずは確認しなければなりません。
中には、「留学」以外の在留資格において、留学生として日本に滞在されていることや、在留期限が切れていることもあります。
仮に、在留期限が切れているなど、企業が不法滞在者を雇用してしまった場合には、不法就労助長罪に問われてしまい、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金を科せられてしまう可能性があります。
そのため、まずは在留カードを確認し、雇用できる外国人であるかを十分に確認する必要がありますが、在留カードの確認のみでは仮に在留カードを偽造されている場合には、見抜けない可能性もあります。このようなリスクを避けるため、入管(出入国在留管理局)に対して、当該外国人の在留資格の適法性について確認することも併せて重要になります。
在留資格の問題は、個々の状況に応じて、お困りの際は行政書士等の専門家に相談するとよいでしょう。
在留資格は、就業される業務と大学・専門学校での専攻に適合性がなくてはなりません。
全くの別分野の業務は原則的に行うことができませんから、雇用する企業は、雇用を検討しているポジションの業務に適合する外国人人材を探さなくてはなりません。
日本人の場合には、人柄で採用し、必要なポジションに併せてスキルを習得してもらうという方法をとることができますが、外国人の方を雇用する場合はそうはいきません。原則的に雇用を検討しているポジションの業務に関しての一定の知識やスキルを有している必要があり、即戦力として期待できる人材である必要があるのです。
そのため、在留カードを確認することと併せて、大学・専門学校での専攻を、まずは確認することが重要です。専攻を確認する際は、外国人の方の口頭や履歴書には頼らず、必ず卒業証明書等を提示いただくよう案内することが賢明です。
外国人の方の口頭や履歴書を信頼し、手続きを進めていたにも関わらず、在留資格の申請時において、虚偽であることが判明した場合には(在留資格の申請時において、卒業証明書等の当該学校を卒業したことを証明する資料の提出が必要となります)、当該外国人が在留資格取得の要件を満たしておらず、すべてが水の泡となってしまう可能性があるためです。
外国人雇用を検討される方の中には、「安く雇用できる」という理由で検討される方も実務上多くいらっしゃいます。
しかし、このような認識は完全に間違いです。
少しずつ法改正が行われておりますが、原則的には日本の入管法は、高いスキルを有しており日本にとって利益を与えられる人材に対して、在留資格が付与されています。
つまり、外国人人材は安い労働力ではなく、日本の発展に寄与できる優秀な外国人という認識が必要となります。
この点、日本で就労される外国人は、「日本人と同額以上の報酬」を受ける必要があることが規定されており、安く雇用することは法的にもできません。
また、今後は外国人の方も、より良い職場を求めて転職をされることも考えられますため、高いスキルを有している外国人であればあるほど、企業側は待遇面を十分に考慮しておかないと、人材の確保が難しくなってしまうことが予想されます。
日本での生活に慣れている留学生を雇用されることは、企業にとって大きなメリットがあります。
しかし、上記のポイントはもちろん、大学や専門学校を卒業した年の4月から入社を希望する場合には、1月あたりから申請を行わなくてはならないことも併せて確認が必要です。
審査期間は1ヶ月〜3ヶ月程度かかるため、卒業と同時の3月に申請をしてしまった場合には、新卒として4月入社ができなくなってしまうためです。
流れとしては、1月あたりに申請を行い、3月の卒業証書を取得した時に、追って入管に写しを提出する形となります。
申請のタイミングを間違えてしまうと、入社のタイミングに関して取り返しのつかない状況となってしまう可能性もございますので、申請取次行政書士等の外国人雇用の専門家に相談されながら申請するとよいでしょう。