外国人の方が日本に滞在するためには、「ビザ」を有していなくてはならないと思われている方も多いでしょう。しかし、外国人の方が日本に滞在するには、様々なルールが設けられており、ビザがあれば滞在できるという認識は間違っているのです。今回は、外国人の方が日本に滞在するまでの流れについて、在留資格取得の専門家である申請取次行政書士が解説します。
日本に滞在している外国人の方はビザを取得して、滞在していると認識されている方も多いと思われますが、厳密にはそうではありません。
外国人の方は、日本に入国する際に与えられる在留資格と在留期間の範囲で、日本に滞在することができるのです。
入管法(出入国管理及び難民認定法)では、次のように「在留資格」と「ビザ」の明確な違いが規定されています。
多くの方がビザと呼んでいる日本に滞在するための資格は、入管法上では「在留資格」と呼びます。入国・在留の目的に応じて与えられる資格で、外国人の方が日本でできる活動は、この資格の範囲内の活動に制限されます。つまり、ビザを取得すれば、日本に滞在できるというのは、厳密には間違いなのです。
ビザとは査証のことで、当該外国人の方の旅券(パスポート)が有効で、その人物が日本に入国しても差し支えないと示す証書(いわば入国の推薦状のようなもの)になります。出発前に海外の日本の大使館や領事館で取得します。なお、特定の国からの観光等の目的での短期滞在については、ビザ(査証)が免除されます。
つまり、ビザは日本に入国するために必要なもの、在留資格は日本に滞在するために必要なものであり、全く異なる性質を持っているのです。
とはいっても、在留資格が許可された後に、ビザの申請を行うため、関連した手続きではあります(在留資格が許可されなくては、ビザの申請は行えません)。
つまり、ビザを持っているということは、日本で在留が許可されたことでもありますから、混同して用いられることがよくあります。一般の方は、ビザと在留資格を混同して理解していても大きな問題はありませんが、実務上は大きな違いがありますから、日本に滞在する予定の外国人の方や外国人雇用等の実務に携われる方は間違いように注意してください。
外国人が日本以外に滞在している場合に、在留資格の申請が許可された場合には、「在留資格認定証明書」が発行されます。
「在留資格認定証明書」は、その名の通り在留資格が許可されたことを証明する書類となり、ビザを申請する際の必須書面となります。
こちらの「在留資格認定証明書」には、注意点があります。
それは、交付された日から3ヶ月以内に日本に入国しなくてはならない点です。
つまり、交付から3ヶ月以内に、ビザの申請を行い、住居を整理し、お仕事をされていらっしゃる場合には業務の引き渡しなどを行い、日本に入国されなくてはなりません。
在留資格は申請しても100%の許可されるものではありませんから、「在留資格認定証明書」が交付されるまでは、不許可の可能性も考えなくてはなりません。
そのため、在留資格の申請期間中は、許可となっても、不許可となっても対応できるように、身の回りを整理しておくことが重要となります。
「在留資格認定証明書」が交付され、ビザの申請を行うことで、原則的に日本に入国及び在留することができます。
しかし、実際に日本に入国する際には、さらに、空港等での入国審査官による、上陸のための条件(上陸許可基準)を満たしているかどうかの審査があります。
上陸許可基準とは、日本の公衆衛生・公の秩序・国内の治安等が害されるおそれがあると認める方の上陸を拒否する際に適用する基準です。
つまり、「在留資格認定証明書」と「ビザ」を持って、入国しようとしたとしても、入国がフリーパスとなる訳ではなく、入国審査官が上陸拒否することが起こりえます。
この点、在留資格の申請時において、当該外国人の前科やこれまでの経歴などは調査されているので、過度な心配は不要ですが、上陸を拒否された場合、空港から出ることができず、そのまま国外へ退去しなければなりません。直ちに退去させることが難しい場合には(航空機が満席等)、空港近くのホテル等に当該外国人をとどめておき、指定の便にて退去させられます。
ここまで説明したように、日本に入国及び在留する為には、在留資格及びビザの申請、上陸許可基準に適合する必要があり、適合しない場合には不許可となります。
不許可となった場合で、更に日本への入国及び在留を希望するのであれば、再申請をすることができます。しかし、不許可となったということは、何かしらの理由があるということですので、当該理由が解消されなくては、何度申請を行っても結果は変わりません。
不許可となった理由を解消するか、入管側に真意が伝わってないと認識された際には「意見書」などを作成し、不許可となるような事由がないことを明確に入管(出入国在留管理局)に説明することが重要です。
日本の外国人在留システムは、日本(入管)側に判断が委ねられているため、外国人の方々は在留の許可をお願いするという立場にあります。
そのため、在留資格申請の手続きの中では、腑に落ちない部分が多々あるかと思われます。
特に異国の地において、日本人でも難しい申請を1人で行うというは難しい部分があり、実務においては、外国人の方が日本以外に滞在している場合には、日本での協力者が不可欠です。
更に、申請が一度不許可となると、また一から申請を行わなくてはなりません。再申請となると、時間や金銭面での損失が大きくなるため、行政書士等の専門家へ依頼することも一つでしょう。