「日本人の配偶者等」の在留資格は、就労制限がなく、日本で自由に就労することができるため、この在留資格をもって働く外国人の方も多くいます。今回は「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人を雇用するメリットと注意点について解説します。
日本人の配偶者は、「日本人の配偶者等」の在留資格を有し、日本に滞在をしています。
「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者及び日本人の特別養子、日本人の子として出生した者に付与される在留資格となります。
この「日本人の配偶者等」の在留資格は、就労制限がないため、日本において自由に就労することができます。
そのため、日本で就労(アルバイト含む)している外国人の方の一定の割合の方が、「日本人の配偶者等」の在留資格を有しています。
就労系の在留資格は、原則的に大学での専攻科目または実務経験に基づく業務しか行うことができません。しかし、「日本人の配偶者等」は、学歴要件及び就労制限がなく、原則的にはどのような仕事も行うことができます。
また、日本人の配偶者として日本に滞在しているため、継続的に日本に滞在することが期待されるため、雇用主としては雇用しやすく存在であるとも考えられます。しかし、日本人の配偶者である外国人を雇用する際には、注意点もあります。
雇用に先立って、当該外国人の在留カードを確認する必要があります。
在留カードを確認する際は、有している在留資格が「日本人の配偶者等」であることの確認と併せて、在留期限を経過していないかを確認することが重要です(在留期間を経過している場合には、不法滞在となります)。
在留期限3ヶ月前程度から、在留資格更新手続きを行うことができるため、当該外国人の在留期限が近日中の場合には、更新の手続きを行っているかの確認も併せて行うことが、雇用主のリスクを軽減するために必要となります。
「日本人の配偶者等」の在留資格を有し、在留期限を経過していないことを確認された後は、日本人の配偶者と同居しているかどうかを確認すること必要です。
なぜ、同居の確認までしなければならないでしょうか?
これは、原則的には「日本人の配偶者等」の在留資格の要件として日本人配偶者と同居している必要があるためです。
婚姻関係を結んでいるにもかかわらず、別居しているとなりますと、偽装結婚を疑われる可能性もありますし、入管としては、なぜ別居しているのかの理由を知る必要があります。
仮に、雇用後、当該外国人の日本人配偶者との別居が判明し、「日本人の配偶者等」の在留資格該当性(要件)に該当しない状況となってしまった場合には、急遽日本を出国しなくてはならない可能性もあるため、雇用時において確認しておきましょう。
この点、別居=「日本人の配偶者等」の在留資格該当性が無いという画一的な判断にはなりませんが(判例上は週1日のみの同居でも在留資格該当性を認めています)、継続的な雇用を担保するために雇用時に、配偶者との同居の有無を確認しておくことが賢明です。
仮に、別居している場合には、別居の経緯や期間、両者の関係、生計を共にしているか等を聞き、偽装結婚と疑われない合理的な理由があるかを確認し、判断が難しい場合には、行政書士等の専門家に相談するとよいでしょう。
日本人配偶者との婚姻が破綻していないかも併せて確認が必要となります。
「日本人の配偶者等」の在留資格該当性に適合するためには、婚姻関係が破綻していないことが求められるためです。
この点、仮に冷却期間が続いている、離婚調停または離婚訴訟が継続している、という場合にも、「日本人の配偶者等」の在留資格該当性に適合するとされています。
つまり、現時点において日本人の配偶者との関係性は芳しくない状況であっても、完全に破綻しているとは言えない状況である場合には、在留資格上は問題無いことになります。
しかし、今後、当該外国人が日本人の配偶者と離婚した場合には、「日本人の配偶者等」の在留資格を有し、日本に在留することができなくなるため(離婚後、別の日本人と再婚した場合は除く)、この点は注意が必要です。
「日本人の配偶者等」の在留資格を有している外国人は、一定の日本語能力も期待でき、かつ、継続的な日本での滞在が予想され、雇用主としては大きな戦力となるでしょう。一方で、今回説明したような注意点もあります。
在留カードを確認し、当該外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格を有していることを確認しておけば、雇用主側が不法就労助長罪等に問われる可能性は低いでしょう(継続的な在留資格に関する確認は必要となります)。
しかし、当該外国人が日本人配偶者と同居していない、関係が破綻している状況の場合には、雇用主に予期せぬ不利益が被る可能性もあるため、雇用時において、十分な確認が必要です。
雇用リスクを軽減するために、状況に応じて、行政書士等の専門家への相談を検討することもよいでしょう。