在留資格の基礎知識
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外国人を雇用するときの3つの注意点

2020.8.17 外国人雇用

現在は、新型コロナウイルスの関係で、外国人の日本への入国は、大幅に制限されてはいますが、2019年の訪日外国人数は、3000万人を超えています。また、外国人の中長期在留者(3ヶ月を超えて日本に在留している者)も、2019年末で、260万人を超えています。つまり、現在の日本は、50人に一人は、中長期に在留する外国人でしめられているということになります。

今後、少子高齢化社会をむかえる日本では、慢性的に労働力の不足が懸念されています。このような背景もあり、今までは、日本人しか雇用していなかった企業が、外国人の雇用を本格的に検討しようということも、自然な流れだといえます。

そこで、外国人を雇用するときの主な注意点について解説します。

 

注意点1:日本人と同じルール(法令)が適用される

外国人を雇用するときの注意点として、まず、最初に認識しなくてはいけないことは、日本人に適用されるルールは、原則として、外国人にも適用されるということです。

日本人に適用される、労働法規、社会保険は当然、外国人にも、そのまま適用されます。外国人だから、長時間働かせてよい、安い賃金でよい、社会保険に入らなくてよい、ということは一切ありません。令和の時代に入った今でも、企業経営者の中には、外国人の雇用=安い労働力と考えられている方がいます。しかし、現実は、外国人雇用は、日本人に適用されるルールを守りつつ、さらにその上に、外国人特有のルールが積み重なるので、かえってコストがかかります。ですので、外国人雇用を考えた時に、まず最初に意識しなくてはいけないことは、外国人雇用は、日本人の雇用より、コストがかかる場合が多いということです。

このことをまず意識して、外国人は雇用をしないといけません。

 

 

注意点2:職種は在留資格で制限される

日本人はどのような職業にも就くことができますが、外国人はそうではありません。外国人が働くことのできる職種は、あらかじめ在留資格という形で決められており、どんな職種でも外国人を雇用することはできません。

 

例えば、小売業を展開している企業が、店舗の現場で「販売」をする人員が不足しているので、外国人を雇用したいと考えたとします。しかし、日本の在留資格には、「販売」をさせる在留資格はありません。コンビニエンストアでは、多くの外国人が働いていると思われるかもしれませんが、その多くは、留学の在留資格を有する外国人が、資格外活動許可という特別な許可をもらって働いています。

したがって、まずは、自社が外国人に働いてもらいたい職種(職場)が、そもそも、日本の在留資格の中にあるのかどうかの確認が必要です。

 

そして、自社が外国人に働いてもらいたい職種(職場)が、在留資格としてある場合に、採用して雇用したいとする外国人が、その在留資格を取得することができる外国人なのかどうかを考えなければなりません。

日本の学校を卒業した外国人が、日本の会社に就職する時に、多くの外国人が取得する在留資格に「技術・人文知識・国際業務」というものがあります。この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が認められるためには、簡単に説明すれば、学校で学んだことと、会社で実際に行う仕事とが、関連していることが必要とされています。そして、この関連していることの程度としては、大学を卒業の場合は、比較的ゆるやかに判断されるのに対し、専門学校を卒業の場合は、厳格に判断されます。そのため、採用して雇用したいとする外国人が、そもそも、自社でしてもらいたい仕事、業務と関連したことを、学校で学んできているのかを確認する必要があります。そして、特に専門学校を卒業している外国人の場合は、慎重に確認する必要があります。

 

資格を持たない者を雇用すると「不法就労」となり、雇用した側も「不法就労助長罪」という罪に問われる可能性がありますから、この在留資格の有無は特に慎重に確認するようにしましょう。

 

 

注意点3:外国の文化・ルールへの配慮が必要

外国人雇用の注意点としての三つ目は、雇用するのは、外国人であるということの認識を改めて持つということです。外国人は、当たり前ですが、日本とは違った文化で、今まで生活をしてきています。日本には、「郷に入っては郷に従え」という、ことわざがありますが、このことを正面から外国人に求めすぎると、せっかく会社に入ってもらったのに、辞めてしまうということにもなりかねません。日本人では当たり前のことが、外国人からすれば、当たり前でないことも、多くあります。

もちろん、会社では、多くの方が働いていますから、外国人だけを特別扱いする必要はありませんが、お互いに育ってきた環境が違っている、という認識を持って、極力、外国人とのコミュニケーションを多く行う、そして日本人と外国人の双方が、気持ちよく働ける職場環境を維持していくことが、必要です。

 

 

まとめ

外国人を雇用するときの主な注意点について解説しました。これから外国人材を必要とする場面も増えてくるでしょう。しかし、外国人を雇用するとき特有のルールなどがありますから、注意してください。

 

(参考記事)外国人を雇用する際に必ず押さえておくべき3つのポイント